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和歌山地方裁判所田辺支部 平成8年(ワ)12号 判決

原告

和歌山県信用保証協会

右代表者理事

中西伸雄

右訴訟代理人弁護士

福田泰明

被告

田上哲

右訴訟代理人弁護士

堂前美佐子

竹澤大格

被告

中前賀江子

右訴訟代理人弁護士

富永俊造

主文

一  被告中前は、原告に対し、金一億〇一七六万六一六二円及び内金五五二八万七九一二円に対する平成二年一一月三〇日から支払済みに至るまで年14.60パーセントの割合による金員を支払え。

二  原告の被告田上に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用は、原告と被告中前との間においては、原告に生じた費用の二分の一を被告中前の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告田上との間においては、全部原告の負担とする。

四  この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  原告の請求

被告らは、原告に対し、各自金一億〇一七六万六一六二円及び内金五五二八万七九一二円に対する平成二年一一月三〇日から支払済みに至るまで年14.60パーセントの割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  本件は、原告が金融機関(訴外新宮信用金庫、訴外株式会社第三相互銀行(現株式会社第三銀行))から保証委託を受け、これら金融機関の訴外東水道工業株式会社(以下「東水道」)に対する三件の貸金債務(以下「本件貸金債務」)につき保証をし、その後これら債務の不履行により金融機関に代位弁済(一件につき昭和六〇年七月二五日、その余につき同年九月二六日)したことにより、東水道は原告に対し求償債務(以下「本件求償債務」)を負担することになったが、被告らが、本件求償債務につき東水道のために連帯保証をしていたことから、原告が被告らに連帯保証債務(以下「本件連帯保証債務」)の支払を求めた事案である(原告の請求原因については、別紙のとおりであり、その認否については、被告田上が、請求原因一及び三を、被告中前が請求原因一、三及び五を認め、その余はいずれも不知。)。

二  (被告らの消滅時効の主張)

1  原告が東水道から本件求償債務につき最後に弁済を受けたのは、原告の別紙計算書によれば、平成二年一一月二九日であるから、この日から商事債権の五年の短期消滅時効期間が既に経過しており、被告らは、この消滅時効を援用する。

2  仮に、後記のように主債務者の東水道につき、破産手続の存在により本件求償債務の時効中断が認められたとしても、東水道の破産手続の中で権利行使があったのは、あくまでも原債権たる本件貸金債務についてであって、本件求償債務自体に対する権利行使はなかったのである。最高裁平成七年三月二三日第一小法廷判決は、求償権の行使が一度もないのに拘わらず、求償債務に対する消滅時効の中断を認めたが、これは、原債権の破産手続における代位弁済による原債権の承継届が、法的に求償権に対する行使の意思表示として評価できるという理由による。そして、被告らは、原債権たる本件貸金債務自体については連帯保証をしていなかったものである。したがって、右判例の解釈から、右中断の扱いは例外的に意思表示の存続する間だけ時効を中断する趣旨と解すべきで、配当によって権利行使の終了している本件では(右最高裁判例は、配当のなかった場合のもの)、最後の配当のなされた平成二年一一月二七日から再び時効が進行を始め、平成七年一一月二七日をもって本件求償債務は時効により消滅した。

(原告の消滅時効に対する主張)

本件では、主債務者の東水道が昭和五九年八月三一日和歌山地方裁判所新宮支部において破産宣告を受け、本件貸金債務については、各金融機関が債権届を出して債権調査期日において確定していたところ、原告は本件貸金債務の代位弁済後配当通知のあった平成二年九月三日までに、破産裁判所に対し求償権者として、原債権たる本件貸金債務につき各金融機関の地位を承継した旨の届出名義の変更を行った。原告は、平成二年九月二六日と同年一一月二七日配当を受け、これを本件求償債務に充当し、右破産手続は平成三年二月一二日終結したものである。本件訴訟は、右終結の日から五年以内である平成八年二月五日に提起されたものであるから、本件求償債権の消滅時効は完成しておらず、本件連帯保証債務も消滅していない。前記最高裁判例は、破産手続参加による時効の中断効を破産手続終結の時までとしたもので、最後配当時までとしたものではない。

三  (被告田上の権利濫用の主張)

1  仮に消滅時効が東水道の破産手続の終結まで中断していたとしても、原告が最後に代位弁済をした昭和六〇年九月二六日から一〇年以上して、東水道の破産手続に関与していない被告田上に対し、突然元利金を含め一億二〇〇〇万円以上になる本件連帯保証債務の履行を求めることは、権利濫用に当たり許されない。

2  即ち、東水道の代表者は訴外東義和(以下「訴外東」)であったが、同人が代表者であった有限会社東商店(以下「東商店」)も、東水道と同じ日に破産宣告を受けた。原告は、この東商店についても信用保証をなし、被告田上がその求償債務につき連帯保証人となっていたが、原告は、東商店に対する求償債務については、連帯保証人である被告田上に対し一三一万九〇六六円の請求をなし、被告田上は毎月五〇〇〇円ずつ支払を続けてきたが、本件求償債務に対しては請求を受けず、被告田上は、最早本件求償債務については免責されたものと考えて生活してきた。商法が五年の短期消滅時効を決めているのは、取引社会の中にあって五年で金銭貸借関係の清算を済ませるのが妥当とされる期間だと考えたからである。しかるに、原告は、連帯保証人である被告田上に対し、いつでも請求できる状態にありながら、一〇年以上にわたり放置しておき、この間に被告田上は、このような多額の保証債務がないという外観を保って取引社会の中で活動してきたもので、第三者も被告田上のこの外観を信頼して取引をしてきたものである。したがって、このように原告が代位弁済後一〇年以上の長期にわたり、被告田上に対し法的手段を取らず放置しておきながら、現在に至って本件連帯保証債務の請求の訴を起こすことは、取引社会に混乱をもたらすのみでなく、被告田上を人生の晩年において破産に追い込むものであり、権利濫用として許されない。

(原告の権利濫用に対する主張)

被告田上は、本訴提起まで本件連帯保証債務の請求を受けたことがないというが、最近でも平成四年五月一日に督促状送付、平成七年一一月六日に残高の通知というように何度も通知をしている。

第三  当裁判所の判断

一  原告主張の請求の原因は、別紙のとおりであるところ、請求原因の一及び三については、当事者間に争いがなく、その余の請求原因については、甲一ないし一六及び証人水田順造、被告田上本人並びに弁論の全趣旨により、これを認めることができ(なお、請求原因五については、原告と被告中前との間において争いなし)、結局、本件訴訟の争点は、両被告の関係では、本件連帯保証債務について消滅時効が完成したか否かであり、更に、被告田上との関係では、原告の本訴請求が権利濫用に当たるかの二点である。

二  消滅時効の完成について

1  甲一七、一八、二一、二四、被告田上本人並びに弁論の全趣旨によれば、主債務者の東水道は、昭和五九年八月三一日和歌山地方裁判所新宮支部において破産宣告を受けたこと、本件貸金債務については、各金融機関が右破産手続において債権届を出して債権調査期日において確定していたところ、原告は本件貸金債務の代位弁済後、配当通知のあった平成二年九月三日までに、破産裁判所に対し求償権者として、原債権たる本件貸金債務につき各金融機関の地位を承継した旨の届出名義の変更を行ったこと、原告は、平成二年九月二六日と同年一一月二七日配当を受け、これを本件求償債務に充当し、右破産手続は平成三年二月一二日終結したものであること、本件訴訟は、右終結の日から五年以内である平成八年二月五日に提起されたこと、以上の事実が認められる。

2  そして、最高裁平成七年三月二三日第一小法廷判決は、債権者が主たる債務者の破産手続において債権全額の届出をし、債権調査の期日が終了した後、保証人が、債権者に債権全額を弁済した上、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときには、右弁済によって保証人が破産者に対して取得する求償権の消滅時効は、右求償権の全部について、右届出名義の変更のときから破産手続の終了に至るまで中断すると解するのが相当である。と判示して、求償権の消滅時効が破産手続の終結までであると明確に述べているから、消滅時効の中断は、最後配当の日までであるとする、被告らの主張は独自の見解というしかない。

3  そして、主債務者の本件求償債務につき、時効が中断したと認められる以上、破産手続における債権の届出名義の変更については、原債権たる本件貸金債務を行使したものに過ぎず、本件求償権自体の行使がなされたものではないとしても、主債務者につき中断が生じたとされるため、民法四五七条一項により中断は連帯保証人にも及ぶものと解されるから、被告らとの関係でも、消滅時効は破産終結の日の翌日から進行を始めるものと解せざるを得ず、したがって、本件連帯保証債務については消滅時効は完成していない。

三  権利濫用について

1  ところで、前記最高裁判決では、主債務者につき破産手続が開始した場合には、主債務者に対し求償権を行使しようとしても、破産手続が終結しない限り、法的手段を取ることはできないが、求償債務の連帯保証人については主債務者の破産手続中でも、連帯保証人自身破産申立をし破産手続中でない限り、これを相手に法的手段を取ることが可能であり、主債務者の破産手続の終結を待つ必要はないことはいうまでもない。

2  そして、連帯保証人としては、主債務者の破産手続が開始後、早い時期に求償債務につき連帯保証による請求を受ければ、自らも破産申立をして債務を整理清算し、免責を受けるなど早期に再出発をするチャンスを得ることもできるが、主債務者の破産手続の進行が長期に及び、何年も放置された後に連帯保証人として法的請求を受けたような場合には、その間の営業継続により形成された取引先などに突然の迷惑を及ぼすことから、自ら簡単に破産の申立をすることもできず、また、破産申立をしたとしても、従前における早期申立に比べ、取引先に対し、より以上の迷惑を及ぼすことになるから、再出発のための協力も得にくくなって、連帯保証人の更生を妨げる可能性も高いものと考えられる。

3  更に、前記最高裁判例は、破産裁判所に対してなされた原債権の届出名義の変更の申出は、求償権の満足を得ようとしてする届出債権の行使であって、求償権について、時効中断効の肯認の基礎とされる権利の行使があったものと評価されるということを、理由として求償権についての時効の中断を認めているが、しかしながら、行使されたのはあくまでも代位にかかる原債権であって求償権ではなく、全くの第三者の連帯保証人の場合、主債務者を破産者とする破産手続については、その進行の状況を当然に知りうるものでもないから、このような求償権の行使の意思を知りうるものでないこと、したがって、第三者の連帯保証人に対する関係で、求償債務につき時効の中断が生ずるのは、民法四五七条一項で主たる債務者につき時効中断が生じた結果、連帯保証人にも中断が生じたに過ぎない。

4  そして、主債務者は、法人の場合には自らの破産手続で清算を終え、また、個人の場合には、免責手続で一定の要件で債務につき責を免れるものであり、その結果主たる債務者の求償債務については、消滅するか自然債務になる一方、連帯保証人についてのみ、求償債務の責任が残る結果になるのである。してみると、破綻の原因を作った主債務者には、免責などにより更生の機会を与えられながら、連帯保証人は、なお何時までも求償債務につき法的責任を負い、債権額によっては、何時でも破産の危険を負担しなけらばならないという不合理なことも発生するのである。このように考えると、主債務者の財務内容につき十分な情報があり、主債務者の破産申立と同時に自らも破産申立をすることが可能で、その後においても、主債務者の破産手続の進行状況、届出債権額、資産評価や配当見込などを知りうる、主債務者の代表者や親族の連帯保証人については格別、それ以外の第三者の連帯保証人については、早期に求償債務につき請求をなし、自らも破産申立をなすか、資産の処分などにより清算をするか、長期分割弁済をなすかなど、連帯保証人の求償債務処理について可能な限りで方向付けをしたうえで、連帯保証人自身の営業の存続の可否を判断させ、債務の回収を図ることが、連帯保証人を中心として形成される取引の信用の維持のために不可欠であり、近時、消費者破産において、破産者の生活の更生のため免責制度が利用されていることにも鑑みると、主債務者が経済的に破綻したことが明らかになった破産宣告や代位弁済から、五年以上も経過しながら、何らの具体的法的手段を取らず放置しておくことは、職務の怠慢というしかない。したがって、破産終結から五年以内に求償債務につき訴訟が提起されたとしても、破産手続の進行が遅れて当該代位弁済により求償権を取得した時から、著しい長期間が経過したり、その債権額が著しく高額で、連帯保証人自らも破産の申立に至ることが必然である一方、主債務者の破産申立後に第三者との取引が生じ、その第三者に不測の損害を与えるおそれがあり、更に右連帯保証人を破産に追い込むことが苛酷なものと認められる場合には、求償債務の連帯保証人に対する請求が権利濫用として許されない場合がある、と解すべきである。

5  ところで、証人水田順造、被告田上本人、並びに甲三二、乙一ないし三によれば、東水道、東商店、訴外東は昭和五九年の同時期にいずれも破産宣告を受けたものであること(同年(フ)第一二ないし一四号)、被告田上は、訴外東の友人で、東水道の監査役に就任していたこと、このため被告田上は、それぞれの破産宣告時で、元金だけで東水道につき一億二五三七万九〇〇〇円、東商店につき一億〇六五一万九〇六六円、訴外東につき一〇七二万円の連帯保証をしていたこと、原告は、金融機関の東水道及び東商店に対する貸金債務につき、信用保証委託を受け保証をしていたこと、その内、代位弁済により取得した東商店の一三一万九〇六六円の債務については、その破産後直ぐ回収にかかり、右求償権の連帯保証人であった被告から毎月五〇〇〇円の割合で返済を受けていた事実があること、一方、東水道の本件求償債務については、平成二年六月二〇日串本の担保物件の処分で五二〇万〇〇〇九円を受領、同年九月二八日破産の配当五八万六〇五七円受領、一一月二九日破産の追加配当九万五七四九円を受領したものの、連帯保証人である被告田上に対して、本件求償債務の支払を請求して、直接支払を受けたことはないこと、東水道の破産手続は、平成三年二月一二日に、保証人東義和の破産手続は、同年三月二七日にそれぞれ破産終結しており、原告の使用していた東水道の管理処理表の平成三年六月二八日付け欄には、残債権につき五五二八万七九一二円との記載がなされていること、そして、平成六年一一月一日と平成七年一一月六日には、原告から本件求償債務関係の債務者に残高通知書が送付された記載があるが、宛先から法人と東義和は除くとされていることから、訴外東は破産手続の免責を受けたものと推測されること、以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

6 そうすると、東水道につき破産終結後の平成三年六月二八日には、本件求償債権額がほぼ確定したものと把握していたものと考えられるうえ、そもそも連帯保証人の被告田上については、代位弁済後においては何時にても法的手段を取り得たもので、昭和六〇年七月二五日と同年九月二六日に代位弁済をしてから、本訴提起の平成八年二月五日まで法的手段を取らず、いつでも破産に追い込める状態に置いておくことは、被告田上にとって、甚だしく苛酷な状態であるものと考えることができる。そして、主債務者たる訴外東が既に免責を受け、更生への途を辿っている一方、被告田上はこのような苛酷な状態に置かれたうえ、破産になれば、これから再び第一歩からやり直さなければならないことを考えると、東水道に対する破産手続の関係で、被告田上の本件求償債務に対する連帯保証債務につき時効が成立したと直ちに解されないとしても、なお被告田上に対する本件求償債務の請求は、権利の濫用として許されないものというべきである。

第四  結論

そうすると、原告の被告田上に対する請求は理由がないから棄却し、被告中前に対する請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官平澤雄二)

別紙損害金計算書〈省略〉

別紙請求の原因

一 原告は、中小企業者等が銀行その他の金融機関から融資を受けるにつき、その信用保証を行うことを業とする信用保証協会法に基づき設立された法人である。

二 原告は、訴外東水道工業株式会社の委託により、昭和五六年二月一七日(甲保証)及び昭和五七年八月一一日(乙保証)及び昭和五九年二月二日(丙保証)同社との間で左記信用保証委託契約を締結した。

1 甲保証

① 訴外東水道工業株式会社が訴外新宮信用金庫(以下訴外金庫という)から金五六七〇万円の貸付を受けるについて、原告は、信用保証協会法に基づく信用保証を行なう。

② 訴外東水道工業株式会社の債務不履行により、原告が訴外金庫に代位弁済したるときは、同人は、その弁済額及びこれに対する弁済の日の翌日から支払済みに至るまで、年18.25%の割合による損害金を支払う。

③ この契約に関する損害・和解及び調停については、和歌山地方裁判所又は和歌山簡易裁判所を合意管轄とする。

等、その他の約定をなした。

2 乙保証

① 訴外東水道工業株式会社が訴外新宮信用金庫(以下訴外金庫という)から金四〇〇〇万円の貸付を受けるについて、原告は、信用保証協会法に基づく信用保証を行なう。

② 訴外東水道工業株式会社の債務不履行により、原告が訴外金庫に代位弁済したるときは、同人は、その弁済額及びこれに対する弁済の日の翌日から支払済みに至るまで、年18.25%の割合による損害金を支払う。

③ この契約に関する訴訟・和解及び調停については、原告の本所または支所の所在地の裁判所を合意管轄とする。

等、その他の約定をなした。

3 丙保証

① 訴外東水道工業株式会社が訴外株式会社第三相互銀行(現株式会社第三銀行、以下訴外銀行という)から金一〇〇〇万円の貸付を受けるについて、原告は、信用保証協会法に基づく信用保証を行なう。

② 訴外東水道工業株式会社が原告の信用保証により借入をするときは、借入金債務に対し原告所定の信用保証料を支払い、又、借入金債務の履行を怠った時はその延滞額に対し延滞期間に応じ年3.65%の割合による延滞保証料を支払う。

③ 訴外東水道工業株式会社の債務不履行により、原告が訴外銀行に代位弁済したるときは、同人は、その弁済額及びこれに対する弁済の日の翌日から支払済みに至るまで、年18.25%の割合による損害金を支払う。

④ この契約に関する訴訟・和解及び調停については、原告の本所又は支所の所在地の裁判所を合意管轄とする。

等、その他の約定をなした。

三 被告らは原告に対し昭和五六年二月一七日に前項の甲保証の結果生ずる求償債務について連帯保証し、昭和五七年八月一一日に前項の乙保証の結果生ずる求償債務について連帯保証し、さらに、昭和五九年二月二日に前項の丙保証の結果生ずる求償債務について連帯保証した。

四 原告は、右信用保証委託契約に基づき、訴外金庫及び訴外銀行に信用保証を行ない、訴外東水道工業株式会社は原告の右各信用保証により、それぞれ左記の約定の借入れをした。

1 甲保証

借入日 昭和五六年三月一〇日

借入金額 金五六七〇万円

貸付利息 年9.80%

最終弁済期限 昭和六四年七月九日

元金弁済方法 昭和五六年四月九日を第一回として、以後毎月九日迄に金五六七、〇〇〇円宛分割弁済し、期限に残額を完済する。

利息支払方法 昭和五六年四月九日を第一回として、以後毎月九日迄に一ヶ月分を後払いする。

特約 債務の一部でも履行を怠ったときは、期限の利益を失い直ちに残債務全額を弁済する。

等、その他の約定をなした。

2 乙保証

借入日 昭和五七年八月一四日

借入金額 金四〇〇〇万円

貸付利息 年8.90%

最終弁済期限 昭和六二年八月一〇日

元金弁済方法 昭和五七年九月一〇日を第一回として、以後毎月一〇日迄に金四〇〇、〇〇〇円宛分割弁済し、期限に残額を完済する。

利息支払方法 昭和五七年九月一〇日を第一回として、以後毎月一〇日迄に一ヶ月分を後払いする。

特約 債務の一部でも履行を怠ったときは、期限の利益を失い直ちに残債務全額を弁済する。

等、その他の約定をなした。

3 丙保証

借入日 昭和五九年二月一六日

借入金額 金一〇〇〇万円

貸付利息 年7.25%

利息支払方法 借入日から手形支払期日までを前払い、以後手形振出日から手形支払期日迄を前払いする。

弁済期限 昭和六〇年二月一五日

弁済方法 一括払い

特約 債務の一部でも履行を怠ったときは、期限の利益を失い直ちに残債務全額を弁済する。

等、その他の約定をなした。

五 ところが、訴外東水道工業株式会社は、

1 甲保証借入金債務の返済を元金については金四三、〇〇二、〇〇〇円を、利息についても昭和五九年五月九日までの分を支払ったのみであり、その後の返済を履行しなかったので、訴外金庫の請求により、昭和六〇年七月五日甲保証借入金債務の期限の利益を失った。

2 乙保証借入金債務の返済を、元金については金八、四〇〇、〇〇〇円を、利息についても昭和五九年五月一〇日までの分を支払ったのみであり、その後の返済を履行しなかったので、訴外金庫の請求により、昭和六〇年七月五日乙保証借入金債務の期限の利益を失った。

3 丙保証借入金債務の返済を、元金については全く返済せず、利息についても昭和五九年七月一〇日までの分を支払ったのみであり、その後の返済を履行しなかったので、訴外銀行の請求により、昭和六〇年二月一五日丙保証借入金債務の期限の利益を失った。

尚、保証料についても昭和六〇年二月一五日までの分を支払ったのみである。

六 よって原告は、甲保証、乙保証について訴外金庫に、丙保証について訴外銀行にそれぞれ左記のとおり代位弁済をなし求償権を取得するとともに被告らに通知し支払方請求した。

1 甲保証

代位弁済日 昭和六〇年七月二五日

代位弁済金 金一五、三二三、五九六円

(内訳)

元金 金一三、六九八、〇〇〇円

利息 金一、六二五、五九六円

但し、右元金に対し昭和五九年五月一〇日から昭和六〇年七月二五日まで年9.80%の割合による四四二日分の利息。

2 乙保証

代位弁済日 昭和六〇年九月二六日

代位弁済金 金三五、四八三、四二三円

(内訳)

元金 金六一、六〇〇、〇〇〇円

利息 金三、八八三、四二三円

但し、右元金に対し昭和五九年五月一一日から昭和六〇年九月二六日まで年8.90%の割合による五〇四日分の利息。

3 丙保証

代位弁済日 昭和六〇年九月二六日

代位弁済金 金一〇、六七五、三四二円

(内訳)

元金 金一〇、〇〇〇、〇〇〇円

利息 金六七五、三四二円

但し、右元金に対し昭和五九年七月一一日から昭和六〇年六月一五日まで年7.25%の割合による三四〇日分の利息。

尚、代位弁済金のほか元金一〇、〇〇〇、〇〇〇円に対し期限の利益喪失日の翌日である昭和六〇年二月一六日から代位弁済日である昭和六〇年九月二六日まで二二三日分年3.65%の割合による延滞保証料二二三、〇〇〇円を併せて請求した。

七 その後原告は、

甲保証について、訴外東水道工業株式会社より金四九八、一三三円(うち、金四九五、四九三円を求償債権元本へ、金二、六四〇円を費用へ充当)の弁済を受けた。

乙保証について、訴外東水道工業株式会社より金四三二、二四八円(求償債権元本へ充当)の弁済を受けた。

丙保証について、訴外東水道工業株式会社より金五、二六六、七〇八円(求償債権元本へ充当)の弁済を受けた。

八 ところで、原告は平成五年七月一日以降請求に係る全ての求償債権について、その損害金比率は第二項1、②、同項2、②、同項3、③の比率にかかわらず、代位弁済時に遡って年14.60%に抑えて請求する旨方針を決定している。

九 右により被告らは原告に対して左記の債務を負担している。

1 代位弁済金残金 金五五、二八七、九一二円

但し、甲保証代位弁済金残金一四、八二八、一〇三円と乙保証代位弁済金残金三五、〇五一、一七五円と丙保証代位弁済金残金五、四〇八、六三四円との合計。

2 延滞保証料 金二二三、〇〇〇円

但し、丙保証延滞保証料

3 損害金 金四六、二五五、二五〇円

(但し、明細については別紙計算書のとおり。)

合計金一〇一、七六六、一六二円

及び、甲保証代位弁済金残金一四、八二八、一〇三円に対する平成二年一一月三〇日から支払済みまで年14.60%の割合による金員と乙保証代位弁済金残金三五、〇五一、一七五円に対する平成二年一一月三〇日から支払済みまで年14.60%の割合による金員と丙保証代位弁済金残金五、四〇八、六三四円に対する平成二年一一月三〇日から支払済みまで年14.60%の割合による金員との合計。

(一〇) よって原告は、被告らに対し右金員の支払いを求める。

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